In Actionシリーズ


国内で手に入らなくも無いが、一般書店では見かけない書籍シリーズに、Squadron signal Publicationsから出ている『In Action』シリーズがある。見かけは横長A4サイズのソフトカバー本で、ページを開くと横にやたら長くなる。しかもどの本も大体50ページほどしかなく薄いという、なかなか変わった本だ。

こんな何とも怪しげなシロモノだが、個人的にはそれなりに信頼を置いていて、結構な頻度で助けられている書籍の一つである。時には世傑より先に開くこともあったりする。

どんな本なのかという話であるが、いずれも基本的な構成は各機体/派生型の図面と解説、そして塗装図が大体2ページほど掲載されているという、かなりシンプルなものだ。

第二次大戦期のソ連機が少なくない数取り上げられており、何といっても戦闘機だけでなく爆撃機も複数刊行されているのが、とてもありがたい。

確認出来ているレシプロソ連機ラインナップ:

■『LaGG Fighters』(LaGG-3)

■『La-5/7 Fighters』

■『Yak Fighters in Action』

■『Polikarpov Fighters Pt.1』(I-15系)

■『Polikarpov Fighters Pt.2』(I-16)

■『Early MiG Fighters』(MiG-3や試作機など、収録機は紹介欄を参照)

■『Ilyushin Il-4』(DB-3とIl-4)

■『Tupolev SB』

■『Petlyakov Pe-2』

見ての通り、ソ連の主要な戦闘機―I-15, I-16, Yak, LaGG/La, MiGは勿論、SB, Pe-2, DB-3/Il-4といった主力爆撃機もラインナップされている。『世傑』ではいまだ1機種として刊行されておらず (2022年時点)、日本語で読める書籍も無いので、これらは貴重な情報源となるだろう。

それでは、この『In Action』シリーズの強みの話をしていこう。

一番のポイントは、各派生型や生産バッチの差異についての情報だ。それぞれどういった変更が加えられていたのかが、主要な型/バッチごとに記述されている。また文章だけでなく側面図等の図面も掲載されており、それには外見上の変更点の説明も添えられている。視覚的に違いを把握しやすいのは、他の書籍に無い強みだ。

多くの人にはあまり必要でないかもしれないが、一部機体の解説では冷却器・無線機・計器類などの機材名称が記載されているのも特徴だろうか。こうした情報はハードカバー本でなければ書かれていないことがほとんどなのだが、不思議とこのシリーズにはその記載が多い (流石に網羅はしていないが……)。名称が分かっていれば、それをキリル文字に置き換えて調べることが出来るので、そうした調査をする際に助かっている。

弱みの話もしていこう。

まず最初に、運用や活躍についてはあまりページが割かれておらず、そこまで多くの情報は得られないことが挙げられる。もちろん主要な生産機については、運用部隊や活躍などについて記述があるのだが、『世傑』や他の書籍などと比べても、やはりその量は少ないものとなっている。

とはいえ、最低限機体のイメージが付く程度には運用・活躍は書かれているので、細かな話が必要でなければ、この本だけでも問題は無いだろう。

他には、内部的な話─具体的には機体構造などについての情報に乏しいと言うのがある。簡単な説明はなされていたりはするのだが、翼構造や胴体構造といったものの図面は一切掲載されていないし、解説も「どこが金属でどこが木製」程度の説明しかないのである。この辺は『世傑』で構造についてのコラムがあるので、そちらでカバーしよう (※機内写真であれば何枚も掲載されているものもあった、各紹介欄を参照)。

あとは数値系が全てヤードポンドをメインとしており、一応はカッコでkg, km/hなどの単位でも併記がされているのだが、一部抜けもあることだろうか。変換してもぴったり元の数字に戻らない事もあるかもしれないので、少し困ったところではある。

上記からを見ての通り、他の書籍より強み弱みがはっきりしている書籍である。自分が知りたい情報が何かを考えて、購入を検討するのが良いだろう。

一番の問題は入手性だ。2021年現在、手元に5冊ほど所持しているのだが、うち4冊は神保町の某古本屋で、後の1冊はニュージーランドのエアーショーで出店していた本屋で手に入れたものだ。国内のミリタリーに強い書店でも、一度として見たことは無く、正直なところ新品を手に入れる方法が分からない (手持ちの本には、タミヤのシールが付いたものがあった。過去にその辺りで取り扱っていたのだろうか?)。

一応Amazonなどでは並行輸入品と書かれたものがあり、他の通販サイトでもいくらか出品されているものが見られる。時間や手間はかかるが、他の希少本・絶版本に比べればまだ手に入れやすいだろうか……?

このシリーズは『世傑』や『オスプレイ』などのシリーズに比べれば、内容はシンプルかつ形式も統一されており、違いは少なく個々に取り上げるべき内容も多くはない。また著者も同じであるようだ。

なので共通の書評は上記のものとし、以降はそれぞれの本に収録されている機種や特筆すべき点などを書いていくこととする。

もくじ:
Early MiG Fighters In Action

Ilyushin Il-4 In Action

Polikarpov Fighters in action Pt.2  (※収録機はI-16のみ)

LaGG Fighters in action  (2022/07/26追加)


■Early MiG Fighters In Action

書籍名

Early MiG Fighters In Action

著者

Hans-Heiri Stapfer

出版社 Squadron Signal Publications
出版年

2006

書籍形式

ペーパーバック , 56ページ

ISBN 978-0-89747-507-5
言語 英語

ミコヤンおよびグレヴィッチによるミグ設計局が開発した戦闘機―MiG-1からMiG-9 (2代目:ジェット機の方) までをまとめたもの。

収録機体は下記の通り。

  • MiG-1 (I-200含む)
  • MiG-3 (前期型・後期型, スペック表アリ)
  • I-230 (MiG-3U), I-231
  • I-220, I-222, I-224, I-225
  • I-210 (初代MiG-9), I-211
  • DIS (MiG-5), DIS-200
  • I-250 (N-1, N-2), MiG-13
  • I-270 (Zh-1, Zh-2)
  • I-300 (2代目MiG-9), I-301, I-302, I-305, I-307, I-307 'Babochkoi', I-308 (MiG-9M), I-301T (MiG-9UTI), MiG-9L

メインはMiG-3とMiG-9 (2代目) となっており、前者は翼下に装備可能なオプション、運用・活躍、そして塗装・マーキングについても記されている。ドイツとルーマニアに鹵獲された機体についての記述もある。

MiG-3の前期型と後期型の形状の違いが図付きで大変分かりやすいのが一番の収穫だった。

他にはMiG-3から派生した試作機や、I-220シリーズ、MiGの双発戦闘機DIS、混合動力戦闘機I-250、戦後のロケット戦闘機計画機I-270が収録されている。これらの大半は『世傑 第二次大戦ミグ戦闘機』で読めるため、「I-200, MiG-1, MiG-3の外見上の違いの詳細を知りたい!」ということでもなければ、あまり優先して手に入れるものでもないかもしれない……。


■Ilyushin Il-4 In Action

書籍名

Ilyushin Il-4 In Action

著者

Hans-Heiri Stapfer

出版社 Squadron Signal Publications
出版年

2004

書籍形式

ペーパーバック , 49ページ

ISBN 0-89747-471-6
言語 英語

イリューシンが設計し、偵察機や雷撃機としても活躍した長距離爆撃機 DB-3/Il-4とその派生機をまとめたもの。収録機体は下記の通り。

  • TsKB-26, TsKB-30
  • DB-3S
  • DB-3B
  • DB-3TおよびDB-3T魚雷ヒーター付き試験機
  • DB-3TP
  • Capsule DB-3
  • DB-3 Experimental
  • TsKB-30 Moskva, TsKB-30 N-1 Ukraina
  • DB-3M (3面図及びスペック記載アリ)
  • DB-3F/Il-4 試作型, 1939/40/41/42/43-45 (44年型の3面図とスペック記載)
  • Il-4T
  • Il-4 Transport
  • Il-4TK
  • Il-6

主要な生産型のほか、派生型や試作機もラインナップされている。双発爆撃機となると、色々なものを積んだり付けたりしていることもあり、コクピット、機内搭載の各種機材、機外の主要部位、銃座などの写真が数ページにわたり掲載されている。後ろの方には、DB-3/Il-4が搭載していた主要な航空爆弾、航空魚雷、航空機雷の図があるのも嬉しいところ。

だいぶ大雑把にではあるが、雷撃機型の海軍での運用も書かれていて、爆撃機とはまた違った活躍の一片を知れたのも良かった (上の方でも書いた通り、細かな活躍の話などは無いので注意)。また、ドイツに鹵獲された機体のほか、フィンランド空軍で運用されたDB-3MとIl-4についても紹介がされている。

現状 (2022年3月時点) 戦闘機と襲撃機のみの『世傑』は勿論、洋書でもPe-2ほどは取り上げられていない印象のある機体であるので、気になればこの本から入手してみるのも良いかもしれない。


■Polikarpov Fighters in action Pt.2

書籍名

Polikarpov Fighters in action Pt.2

著者

Hans-Heiri Stapfer

出版社 Squadron Signal Publications
出版年

1996

書籍形式

ペーパーバック , 50ページ

ISBN 0-89747-355-8
言語 英語

表紙には『Polikarpov Fighters in action Pt.2』と書かれているが、実際には表紙を飾っているI-16についてしか書かれていないという、よく分からないタイトル付けがなされた本である。『Early MiG Fighters』の様に、複数機種収録されているのなら分かるのだが……。

TsKB-12から最終生産型のType 29まで、多くのI-16バリエーションが収録されている。具体的な収録機は以下の通り。

  • 原型機:TsKB-12/TsKB-12bis/TsKB-12P
  • 主生産型:Type 4/5/6/10/17/18/24/27/29
  • 複座型:UTI-2/UTI-4
  • 計画・試験機:TsKB-18/TsKB-29/I-16TK/Type 20
  • Zveno計画:Zveno Type 4/5

諸説あるType 6については、「エンジンをM-25Aに換装し、開放型コクピットにしたもの」としていた。諸説については『世傑』を参照のこと。

また他のシリーズと同じく、各国での生産機や鹵獲機の運用についても記載されている。

  • スペイン:Type 5/6/10(スペイン製含む)/UTI-4
  • 中国:Type 5/6/10/Jung-28A (忠-28甲のこと)
  • フィンランド:Type 5 (IR-101)/18 (VH-21)/UTI-4 (UT-1)
  • ルーマニア:Type 29
  • ドイツ:UTI-4
  • ポーランド:UTI-4

一通りの量産されたTypeや、原型となった試験機、関連する試作型など、I-16という機体の主な派生型はほぼほぼ収録されている。量産されたにも関わらず抜けているものとしては"Type 28"があるが、これは単純に「Type 24の20mm機関砲搭載型」でしかないので、無くてもあまり困るものでもないだろう。

これ以外で掲載されていない型としては、「12.7mm版ShVAKを搭載したType 16」や「速度強化型ShKASを搭載したType 21/22」といった、あまり表に出てこない試作型などだ。数行程度の概要的なものでよければ、大体は『世傑 ポリカルポフ I-16』に説明があるで、そちらでカバーできるだろう。

三面図 (前面・側面・上下面) については、Type 5・24のものがそれぞれ掲載されている。『世傑』では基本側面図のみで、三面図もType 29 (横の説明文ではType 24と書いてあるが、武装配置などを見るにType 29が正しい) のものしか掲載されていないので、やはりこういうところは『In Action』の方が強い。

度々『世傑』の名を挙げている通り、このI-16という機体に関しては、『Polikarpov Fighters in action』と『世傑 ポリカルポフ I-16』は互いに補いあうところがある。『世傑』側はTypeごとの外見の差異があまり詳細でなく、『In Action』側はその辺りに強い。一方『In Action』側は一部試作機が掲載されておらず、また運用の情報が数行ほどしかないが、『世傑』側は浅くではあるが試作機にも広く触れられており、また運用や活躍についてもコラムがあるなど、十分な情報がある。

資金的余裕や入手する機会に恵まれたのであれば、2冊を揃えて運用することで、I-16についての理解が深まるのではないだろうか。


■LaGG Fighters in action

書籍名

LaGG Fighters In Action

著者

Hans-Heiri Stapfer

出版社 Squadron Signal Publications
出版年

1996

書籍形式

ペーパーバック , 49ページ

ISBN 0-89747-364-7
言語 英語

ラヴォチキンらが開発した木製戦闘機、LaGG-3について扱う1冊。YakやMiGは複数機種で1冊なのに対し、ラヴォチキンの戦闘機はLaGGとLaで分かれている。理由は分からないが、それぞれ分かれている分情報が多いのでありがたい。

収録バリエーションは以下の通りで、LaGGの主要なところは全て入っている。

  • 原型機:I-22/I-301
  • Series:1, 4, 8, 11, 23, 29, 33, 34, 35, 66

これらのほか、日本に亡命したSeries 11、フィンランドに鹵獲された機体たちについても記述されている。

側面図と差異を示す図はSeries 1, 4, 11, 23, 29, 35, 66が、三面図はSeries 1と35のものが掲載されている。

解説についても、各Seriesの違いや変更点について、そして時期や運用回りも添えられている。最新の研究では実在しないとされる「I-22」から話が始まるところなどは、いささか古さを感じるが、その辺りは新しい話が書かれている『世傑』で相殺できることだろう。

 

前項の「I-16」ほどではないものの、「LaGG」も同じように互い補完し合う関係にある。『世傑』では各Seriesの説明が外見的な話で2行程度しかないが、『InAction』では詳細に説明がなされている。この辺りを『世傑』よりも詳しく知りたいという事であれば、手にするのもよいだろう。

 

……とは書いたものの、外見上の差異を示した図にこだわらないのであれば、『世傑』とJason, Moore氏の『Lavochkin Fighters of the Second World War』で事足りるところもある。この書籍も各Seriesの情報に詳しい。側面図ならば世傑に一通りそろっているし、おおよその所はカバーできるはずだ (電子版なら1000円台で安い)。

『In Action』の共通事項であるが、活躍や運用についての記述も乏しいため、この辺りを求めるならばオスプレイの『LaGG & Lavochkin Aces of World War 2』などを頼るしかないだろう。先に書いたMoore氏の書籍も海軍での運用含めそうした記述があるので、こちらでも良いだろうか。

そんな感じで、他よりオススメ度はあまり高くない。入手性や求める情報、そして金額などを考えて検討してみよう。


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以下準備中

■La 5/7 Fighters In Action

書籍名

La 5/7 In Action

著者

Hans-Heiri Stapfer

出版社 Squadron Signal Publications
出版年

20XX

書籍形式

ペーパーバック , XXページ

ISBN  
言語 英語

■Yak Fighters In Action

書籍名

Yak Fighters In Action

著者

Hans-Heiri Stapfer

出版社 Squadron Signal Publications
出版年

20XX

書籍形式

ペーパーバック , XXページ

ISBN  
言語 英語

■タイトル

書籍名

XXXXXX In Action

著者

Hans-Heiri Stapfer

出版社 Squadron Signal Publications
出版年

20XX

書籍形式

ペーパーバック , XXページ

ISBN  
言語 英語