二次大戦とかのミリタリーが好きなひとの本棚には、少なくとも2・3冊は入ってるであろう文庫レーベル。その中でもソ連機について取り扱っているものを紹介する。
NF文庫とは、光人社が出版する「戦争の歴史や戦記物を扱うノンフィクション作品レーベル」であるが……中には歴史や戦記的要素の薄い、非常識的な機体を集めただけの『世界の仰天機』の様な本もある。本によって雰囲気なども大きく異なるので、共通の説明はここまでとして各書籍の紹介に移る。
もくじ:
■WWIIソビエト軍用機入門
■世界の仰天機
■WWIIソビエト軍用機入門
書籍名 |
WWⅡソビエト軍用機入門 |
著者 |
飯山 幸伸 |
出版社 | 光人社 |
出版年 |
2014 (1999:私家版?) |
書籍形式 |
文庫本, 252ページ |
ISBN | 978-4-7698-2839-6 |
定価 | 750円+税 |
書籍名の通りのもので、第二次大戦におけるソ連軍用機をまとめた一冊。表紙には「ソビエト空軍を知るための50基の機体」とあり、まさに入門用の書籍と言った感じである。
構成は、冒頭のソ連空軍の簡単な戦史のほかは、メインの機体解説が9割5分を占めている。機体解説は1機につき、解説が2ページ半、三面図1ページ、そしてイラスト1枚添えられたもので1セットとなっている。
解説は読みやすくコンパクトにまとまっており、巻末にまとめられた機体を除き、1機ずつ図面も掲載されているのはよいところ。
ラインナップもほぼ完璧と言える。DI-6・MTB-1・R-6のようなマイナーの機体も収録されており、無いのは試作機とポリカルポフのI-5のような旧式機くらいだ。まさに第二次大戦中のソ連空軍機を知るには最適な選出である。と、ここまではよいのだが……。
一番の問題点としては、機体解説の内容に難があるというところだ。どうにも参考資料が古いようで (参考欄を見ると60年代の古い書籍も含まれていた)、誤った記述が散見される。
例えばYak-1の解説では、「主生産型はモーターカノンを外し200kg軽量化したYak-1M」というものが出てくる。もちろんそんなことは無い。DB-3の項では「雷撃型 (DB-3T) は45-12AN魚雷を使用」とあるが、DB-3Tはこの魚雷の運用に適していないので使用していない。こうした説明の誤りのほか、単純な機体名やエンジン名の誤りなどもいくつか見られた。
また、解説される機体の順序も入門書としてはあまり親切でないと感じる。並びが機種ごとのまとまりもなくバラバラであり (水上機・戦闘機・爆撃機などが入り乱れている)、そして時系列順でもない。初心者向けであれば、「機体の種別ごと」か「時系列順の並び」かどちらかである方がよいと思うのだが……。
個人的にはあまりおすすめし辛い書籍ではある。だが、情報信頼性や並びの不親切さなどの難はあるにしても、「ソ連空軍 (と海軍航空隊) が使用した国産機にはどんな機体があったのか?」というのを知るには良いものではある。現状、そのような"よくまとまった書籍"が他に無いのだ......。
あまり内容を真に受けないような気持で読み、これを足掛かりとして各種ソ連機への興味を広げていくのが一番よい使い方だと思う。ソ連機の本としてはだいぶ手に入りやすく、比較的安価なので、その辺りを踏まえて購入を検討されてはいかがだろうか。
■世界の仰天機
ソ連機の本という訳ではないのだが、一応ソ連の機体もいくつか収録されているので、ここで紹介しておこう。タイトルから察せられる通り、「世界各国の常識から離れた"ヘンな機体"を集めた本」である。
収録されているソ連機は以下の通り。なおこれらは図面が掲載されている機体のみで、関連機体の名などはもういくらか登場している。
意外にも表紙を飾っているのはソ連機で、上記の中にもあるBICh-17という機体なのだ。詳しくは本を確認してほしい。
仰天するようなヘンな機体たちということは、その殆どは試作機である。となれば、ソ連の試作機を取り扱った『Soviet X-Planes』とも範囲が被ることになる。実際のところ、「Pegas」と「IP-1」以外の機体は全てあちらにも収録されており、そしてより詳しい説明がある。もし「ソ連の試作機を知りたいんだ」ということであれば、最初からあちらを手に入れた方が色々と早いことだろう。
まぁそもそもの話……この本は『ソ連の仰天機』ではなく、『"世界"の仰天機』である。各国の変な機体たちが知りたい、変な試作機入門ということなら、この本から始めるのもよいだろう。
まずは存在を知ること、そして次に興味を持つことが大事なので。
以下追加予定
■ソビエト航空戦
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